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2016/12/07 (水)

“大黒柱マザー”小島慶子さんに聞く、「これからの家事分担のカタチ」

取材・文/日笠由紀 撮影/八木虎造
3年前、夫が仕事を辞めたのを機に一家でオーストラリアのパースに引越した小島慶子さん。現地校に通う二人の息子と、家事をこなしつつ英語の勉強をする夫。小島さん自身は、3週間ごとに日本とオーストラリアを行き来し、メディア出演や講演、執筆で家計を支えるという生活を送っています。そんな一家の“大黒柱”である小島さんに、夫婦間での家事分担のあり方や、小島さんが考える“家事”の位置づけ、家事代行サービスの効用などについて聞いてみました。

小島家は家族全員が家事の担い手。「家内労働制」も採用

――パースにいる3週間の間、ご夫婦では家事をどのように分担していますか?
夫は家事全般と子どもの学校関係の管理。私は執筆の合間に洗濯や掃除、庭掃除、子どもの勉強の手伝い。基本的に「その都度、気が付いたほうがやる」という考え方ですが、私はパースでも締め切りに追われているので、夫のほうが中心となります。料理は日本にいるときから夫がつくってくれています。私は料理をつくるのが遅く、残されると怒る。子どもたちは幼いころは食が細く、結果として食事の時間が全員にとって苦痛になってしまったので、淡々とつくって、残されても私ほどは怒らない夫に任せることになりました。一方、夫は洗濯物を畳むのが嫌いで、すぐに洗濯物が山になってしまいますが、私は好きなのでとっとと畳んでしまいます。パースにいる間は、執筆が忙しくてなかなかそれもできないのですが……。

――すると、洗濯物は誰が畳んでいるんですか?
息子たちに“発注”しています。わが家ではお小遣い制を廃止。「欲しいものがあるときは、家の中にいくらでも仕事があるので、自分で賃金交渉を行い、労働で対価を得なさい」と言い渡しました。「家内労働制」にすれば、子どもは働かないとお金が手に入らないことを学び、親は家事負担を減らすことができます。食器洗いは長男が月に50ドル(オーストラリアドル・2016年11月現在約4000円)の契約で担当。今はスマートフォンを買うためにお金を貯めています。父の日・母の日や家族への誕生日ギフトも子どもたちの自腹。もらったときの喜びも一入(ひとしお)です。先日、次男が洗濯物を畳んでリビングをきれいに片付けたので、規定の2ドル50セントより多く3ドルにしようか?と言うと、「今日は、勉強を教えてくれるパパへのギフトだからいらないよ」と。成長を感じました。ただ、息子たちに対しては、最低限の身の回りのことは無償でやるべきだと伝え、有償の仕事との線引きをしています。

――どんなときにお金を払うんですか?
例えば、自分で自分のベッドのシーツを替えるのは当たり前のことなので、対価は発生しません。一方、家族全員それぞれに仕事や勉強で忙しいため、乾いた洗濯物が1メートルをはるかに超える山積みに!などというときは、「はい、これ規定の倍の5ドル(同約400円)でどうだ!」と私が言い出すわけです。すると長男が、「5ドルは安い。10ドルならやる」と言う。「それなら10ドル(同800円)払うから、畳んで各部屋の引き出しにしまって、ついでにリビングに掃除機をかけて」という条件を私が提示し、長男がその条件を飲んで交渉成立というわけです。

――お手伝いを通じて、交渉の仕方も学べるんですね
その通りです。そして、このとき大事なのは、仕事が終わったら、すぐに10ドルを払うこと。夫は後回しにしがちなのですが、そんなときは私が息子に「すぐに払ってくれと言わなきゃダメだ!」とけしかけて、速やかに支払わせます。将来働き始めて、賃金不払いで泣き寝入りしないためにも、雇用主に対して「契約はきちんと守れ」と言うべきなのです。「家内労働制」は、そうした教育の機会にもなっています。

家事は女の仕事でも、男の仕事でもなく、「人間の仕事」である

――小島さんご自身の“家事観”は?
私は常々、「家事っていうのは、自分が生きていく上で絶対に必要な技術なんだよ」と息子たちに話しています。彼らに「君、毎朝、顔を誰に洗ってもらってる?」と聞けば、「自分で洗ってるよ」と答えるし、「ウンチした後、お尻どうしてる?」と聞けば、「自分で拭いてるよ」と答える。その流れで、「ものを食べるときは安全に衛生的にかつおいしく調理をして食べる」「汚れものを放置すると衛生上良くないので片付ける」といったことは、自分で顔を洗ったり、お尻を拭いたりするのと同じように当たり前のことなのだと話すと、彼らも納得しますね。育児も同じで、「目の前に無力で人の助けを必要としている人がいたらその人を助ける」「その人が経済的に自立していけるようになるまでサポートをする」ということも、人として当たり前のこと。家事も育児もできないということは、誰かにそれをやってもらわないと生きられない人間になってしまう。つまり、親がいないと死んでしまう子どもと一緒で、自立できないということになります。「だから、絶対にできるようにならなければならないんだよ」と息子たちには話しています。

――ご夫婦ともに同じ考えですか?
 夫もまったく同じ考えで、家事や育児は「男の仕事」「女の仕事」ではなく、「人間の仕事」と考えています。実際、日本にいたときから、共働き、共育てをしてきました。6年前に私がフリーになったことで忙しくなってからは本当に大変でしたが、彼は「男が子育て!?」と言われがちなテレビ業界で、仕事と家庭の両立を敢行しました。とても勇気のいることだったと思います。生活のためにはお金が必要だけど、同時に、非衛生的な環境では暮らしていけないし、大人の助けが必要な人を放っておくこともできません。「お金を稼ぐことも、家事や育児も、同じように人間の仕事である」という価値観を夫婦で共有できていたのはラッキーでした。
息子たちも、家事にはまったく抵抗がないですね。長男は、学校の「ホームエコノミクス」、つまり家庭科の授業が大好きで、特に料理がとても上手。日曜の朝ごはんにピラフをつくってくれたりします。裁縫も好きで、私に枕カバーを縫ってくれました。赤い生地しかなかったから派手でごめんねーとか言いつつ、くれるんです。「なんだかものすごい夢を見そう」と言いながら、喜んで使っています。

――ご夫妻が家事分担に対する価値観を共有できているのはなぜでしょうか?
 夫に「上場企業勤務の父と、専業主婦の母の家庭に育っているあなたが、家事に抵抗がないのはどうして?」と聞いたことがあります。すると、猛烈サラリーマンだったお義父さんも、家では時々お皿を洗っていたそうで、キッチンで両親が仲良くお尻をぶつけ合いながらお皿を洗っているのを見ていたそうです。商社マンだった私の父も、やはりとても忙しく、台所仕事は一切しませんでしたが、庭仕事や家の壁塗りなどは全部やっていました。両親がどのように家事や育児に関わっていたかは、子どもの価値観に影響を与えるのかもしれません。

家事代行を活用することで「誰かに支えてもらっている」と実感

――東京にいる3週間、家事はご自分で?
東京にいる間は賃貸マンションに住んでいるのですが、掃除は、パースに引越す前から家に来てくれているフィリピン人の女性に頼んでいます。週に1回、3時間のプランで、掃除、洗濯、クリーニング店に仕上がった服を取りに行ったりするのをお願いしています。
フィリピンの人々って、小さいときから、家の中をきちんと整えることが信仰と結びついた習慣になっているんだそうです。その上、彼女が籍を置く家事代行サービスの会社はトレーニング制度が整っていることもあり、非常に仕事が速くて、精度が高い。日本人と結婚しているので、日本語も通じます。彼女の人柄も信頼できるので、ずっとその方にお願いしています。

――家事代行を使ったことで得られたものは?
もちろん、浮いた時間を仕事に使えるのは何よりですよね。ただ、それ以上に感じるのは、「ここまでキレイにしてくださるなんて、本当にありがたい」という感謝の気持ち。そして、「誰かが一生懸命、仕事をしてくれることによって、自分の暮らしを豊かにしてもらっているんだな。支えてもらってるんだな」と実感したことで、「自分も仕事をすることで、誰かの役に立ちたい」という気持ちを、改めて持つことができました。
彼女の仕事から学ぶことも多いんです。もともと私はきれい好きなんですが、彼女はさらにその上を行く。「何かを使った後は、こういうふうに始末をしたらいいんだな」とか、「仕事をするときには、プラスアルファでこういうところに気配りをすると、やってもらった人が『ああよかった』って思うんだな」といったことを、彼女の仕事ぶりから吸収しています。

小島さんの口からよどみなく語られる“家事観”は、とても説得力に満ちていて、「そうそう!」と思わず膝を打つものばかり。「家事は人間の仕事である」という認識が広がれば、家族の誰か一人が背負い込んだりすることなく、もっと自然な形で担い合うことができるのではないか……そんな気付きが得られた今回のインタビューでした。

プロフィール

小島 慶子(こじま けいこ)
1972年生まれ。タレント、エッセイスト。1995年にTBSにアナウンサーとして入社。バラエティー、報道、ラジオなど多方面で活躍。1999年、第36回ギャラクシーDJパーソナリティ賞を受賞。2010年、退社。2014年より、家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本との往復の日々。主な著書に、『解縛(げばく)』(新潮社)、『大黒柱マザー』(双葉社)が、近著に『これからの家族の話をしよう わたしの場合』(海竜社)がある。

取材・文/日笠由紀 撮影/八木虎造

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