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2015/10/07 (水)

村田マリさん「家事ストレスをリセットすれば、今よりきっと気持ちよく働ける」

構成・取材・文/今井早智 撮影/山出高士

株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】 執行役員 村田マリさん

現在、株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員。キュレーション企画統括部長 兼 iemo株式会社代表取締役CEOの村田マリさん。ソーシャルゲームの事業を立ち上げ、エンターテイメント企業のgumiに売却。その2年後には、住まいとインテリアのキュレーションメディア「iemo」を立ち上げ、DeNAにM&Aされる。シリアルアントレプレナーとしてIT業界に話題を提供してきた村田さんですが、女性のライフワークや子育てとビジネスの両立は一貫したテーマだそうです。2012年からはシンガポールに居を移し、新しい働き方を実践する村田さん。ご自身も日本で利用していたことがあるという家事代行サービスについてお伺いしました。

シンガポールで肩の力が抜けた

──DeNAの執行役員を務めながらシンガポールにお住まいで不都合はありませんか?
村田:月に一度、月末の5営業日に出社して対面のコミュニケーションなど日本でなければできない仕事をこなし、そのほかはシンガポールで仕事をしています。日本のスタッフとはテレビ会議やチャットでやりとりしており、現在は大きな問題はありませんよ。

──そもそもどうしてシンガポールに? 共働きが多い国だとは聞いていますが。
村田:いちばんの理由は子どもの病気の治療です。それから、教育。英語と中国語を幼いころから身につけられると思って。ただ、確かに日本よりは共働きの環境が整っていて、働きやすいと感じますね。外国人労働者がとても多い国で、ベビーシッティングや住み込みで家事サポートの仕事をするヘルパーさんが大勢います。家事代行サービスは利用して当たり前という文化なんですね。

──働く女性の負担が減って、きちんと仕事に向き合えそうですね。
村田:というよりも、共働きの家庭が多いせいか、「家事・育児はすべて妻や母親だけの仕事だ」という社会認識が薄いんです。
日本にいたころは私自身にも「母親がすべて完璧にこなすべき」という思い込みがあり、掃除は自分でしなきゃならない、料理は毎日しっかりつくらなきゃいけない、電車やレストランで子どもが騒いだら他人様の迷惑になる、と気負っていました。その点シンガポールは「赤ちゃんは普通泣くよね」と(笑)、ゆるーく見守ってくれる雰囲気です。ご飯も家でつくって食べることが当たり前ではなく、比較的安価なホーカー(Hawker)、日本でいうフードコートがそこらじゅうにあって、仕事帰りにそこで簡単に済ませることも多い。食べ残したらテイクアウトするのも普通で、外食が特別なことではないんです。キッチンが付いてない家だってあるんですよ。

──保育施設も整っている?
村田:そうですね。幼稚園や保育園は比較的入りやすく、待機児童の問題はありません。習い事もチケット制で日にちを選べたり、ショッピングセンターにはドロップオフ(一時預かり)施設があって、仕事帰りにピックアップした子どもを遊ばせている間に買い物ができたり。そうした環境で暮らしていて、家事代行サービスも普通に利用でき、日本で感じていたような過度の責任感から放たれました。肩の力が抜けたんです。時間の捻出がどうこうより、そうした気持ちの部分が一番ありがたかった。

家事業務を細分化して考えると頼みやすい

──日本でも家事代行やハウスクリーニングの利用者が増えていますが、それでも海外と比べれば少ないと聞きます。
村田:日本でサービスを利用すると「自分でもできるのではないか」という話とトレードオフになる。でも、実際にはメリットが大きいと思います。
私が初めて家事サービスを利用したのは、日本でソーシャルゲームの事業を運営しつつ、出産を経験したころです。仕事と家事と育児とでおよそ時間が足りない日々でした。忙しいと、洗濯物が溜まっているとか、たたみ方が雑になるとか、鏡についた水しぶきの汚れが気になりながら出勤するとか、ないですか? そうした、あとちょっとのブラッシュアップや、ここができたらストレスがなくなるのにという余剰の部分をまとめて1回にして、家事代行サービスにお願いしていました。時間さえあればできるんでしょうが、できないまま放っておくとだんだん気持ちが切迫してくる。蓄積するストレスをリセットしてくれるものとして利用したわけですが、当時の私が働くうえでとても重要なことだったと思います。

──家事は毎日のことなので、小さなことがじわじわと効いてきます。見過ごせない部分ですよね。
村田:特に私は家の中が雑然としているのがダメなタイプで、サービスに価値を感じていました。インテリアだとか、収納だとか、住まいに対する思い入れが強いんです。「iemo」というサービスもそんなところから生まれてきたと思っています。……余談ですが、私、引き出しの整理が好きなんですよね。箱庭づくりみたいな感じで、小さな世界観の中であれこれいじりたいんです。カラーならグラデーション順に並べたり、ビンも中味を詰め替えてサイズや色を統一したり。これらはもう趣味の領域なので、その楽しみの時間を捻出するためなら苦手なボタン付けとかお裁縫の家事は代行サービスにお願いする・・・、そんな利用のしかたがあってもいいんじゃないですか。何もパッケージプランでなくても、もうちょっと視界を広げて、例えばいつかやろうと思っていてずっとそのままになっている気がかりなアレを頼む、とか。家事業務を細分化して考えれば、1時間のサービスで解決することがけっこうあるんじゃないでしょうか。

──自分でできることでも人に頼めば、もっとうまくいくかもしれない?
村田:人には得手不得手が必ずあるし、自分ですべてを均等に頑張るというのをあきらめるのも手。仕事も頑張る、家のことも頑張るのではなく、仕事が得意なら家事を少し減らすプランを考える。家事のなかでも、料理はするけど掃除は苦手だからお願いするとか、ウイークポイントを補う部分で頼りになります。プロには相応のスキルがありますから現状より過ごしやすい状況なり住空間なりが得られますし、ストレスもなくなって心を健やかに保つことができますよね。

人生の中で緩急をつける

──自分は利用したくても、パートナーがうんといわない家庭もあります。家事や育児は母親がすべきだと。
村田:それはもう、考え方が時代遅れです。今どきそれではとてもついていけません。たとえば私の周りの男性などは、もうすぐ子どもができるんだけど何をどう手伝えばいいんだろうかと聞いてきます。「オムツ替えをしようか」という発想が多く、それも良いと思いますが、母親が何百回としているうちの数十回を手伝うよりは、むしろ週末に「今日は4時間面倒みるから、子育てでずっと行けなかったエステや美容院に行ってネイルもしておいでよ」と言うほうが印象に残り、評価も高いんじゃないかと答えます。また、夫婦で食事に出る機会をつくるのもいいですよね。ずっと子どもと対峙しているとお母さんという役割になりますが、当然、一個人であり、女性であり、そうした自分を確認するためにも、家事代行とかベビーシッティングサービスを1回だけお願いして2人でディナーに出かける。それも夫婦円満になるコツなのかもしれません。

──お母さんから個人に戻ってリフレッシュできそうですね。
村田:何にしろ、我慢を強いるというのは不健全だと思っていて、長期で物事を続けていく──共働きでやっていくと決めたのなら、それが短期間なら例えば息を止めて走るというようなこともできるかもしれませんが、ずっとそれだと必ずどこかで歪みが出ます。その歪みはたぶん予想より大きい。であれば、サービスをたまに利用して夫婦ともにストレスリセットすることは非常に有効だと思います。

──村田さんも共働きで、しかも常に第一線を走っていますが。
村田:私はよく、「人生の中で緩急をつける」という話をします。2年間専業主婦をしていた経験もあって、家庭人として頑張りたいときはそっち優先、仕事を頑張りたいときは家事代行サービスを利用しながらやってきました。トレンドを見てビジネスを立ち上げるという仕事がら、マーケットを静観できる時期があったというのは大きいです。でも、例えば経理なりプログラミングなり、「手に職」系の仕事もまた、自分で緩急がつけやすい仕事でしょう。男性は年月とキャリアの座標軸を一直線の右肩上がりで考えられますが、女性の場合、出産や育児といったライフイベントがあってそうはいかない。停滞したり、下降したり、ジグザクです。それを意識して、どうしたら復職できるか、20代、30代のうちに自分の強みを見つけて伸ばしておくことが大事なんじゃないでしょうか。仕事や育児が大変なときはもちろんですが、そうした自己投資の時間をつくるために家事代行サービスを利用するというのも、私はアリだと思っています。

プロフィール

村田マリ(むらた・まり)
株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員。キュレーション企画統括部長 兼 iemo株式会社代表取締役CEO。
サイバーエージェント株式会社に入社し、6つの新規事業開発に参画。2005年3月コントロールプラス株式会社を設立し、ウェブ制作事業を開始。2009年にソーシャルゲームへと事業転換を成功させ、2012年にgumiに売却後、シンガポールに移住。2013年12月にiemo株式会社を設立。家と暮らしのキュレーション・メディア「iemo」をオープンし、2014年10月にDeNAにM&Aされる。現在、DeNAの執行役員として働いている。

構成・取材・文/今井早智 撮影/山出高士

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